
秋を代表する虫といえば、「鈴虫」。秋とはいってもまだ残暑が続く中、「リーン、リーン」と涼しげな音色を耳にすると、ほんのひと時であっても暑さを忘れさせてくれます。その「鈴虫」の鳴き声を一年中聞くことができる場所が京都にあるのをご存知でしょうか?
妙徳寺華厳寺、通称「鈴虫寺」といい、江戸時代中期、鳳潭上人が開山した臨済宗の禅寺です。
「鈴虫寺」は京都市西部の松尾山麓にあって、美しい四季折々の花や木々、竹林が参拝客を出迎えてくれます。境内からは京都の市街地が眼下に広がり、比叡山から南へ連なる東山三十六景をも一望できます。
地元京都で「鈴虫」といえば、この「鈴虫寺」を連想する人も多いでしょう。でもどうしてこのお寺でだけ、「鈴虫」が一年中鳴いているのでしょうか?
実は、先代住職が座禅を組んでいる時、「鈴虫」の妙音で開眼したそうです。一般的に「鈴虫」の寿命はわずか一一〇日。しかも最後の二〇日間だけしか鳴かないのです。その短い一生の中で欲もなくひたむきに鳴き続ける姿に、『無心にひたむきに生きよ』という教えを感じとったのです。そんな「鈴虫」の鳴き声をぜひ人々にも聞かせたいと、二八年もの長い歳月をかけて特殊な飼育法を確立し、毎日ふ化させることに成功しました。お寺には常時三〇〇〇匹以上の「鈴虫」が大事に育てられており、五〇年間絶えることなく鳴き声を聞くことができるようになったのです。さらに境内には「鈴虫・万虫供養塚」があって、「鈴虫」とあらゆる虫の霊を慰めています。
また、ここ「鈴虫寺」には、この世の出来事であれば、どんな願いごとでも一つだけ叶えてくれる「幸福地蔵」が立っています。この「幸福地蔵」はわらじを履いていることでも有名です。開運・合格祈願・良縁祈願等、ご利益を願って多くの人々が参拝に訪れます。
また、住職による「鈴虫説法」も行われ、禅宗の教えの一つである「茶礼」に基づいて、お茶とお菓子もふるまわれ、お寺のことやお参りの仕方、あるいは日々の心の持ち方など、肩のこらないお話が聞けます。
近頃ではめっきり姿を見かけなくなってしまった「鈴虫」。その「鈴虫」が奏でる心地良い音色を背に座禅を組むもよし、住職のお話に心を癒されるもよし、しばし都会の喧騒から離れ、心穏やかなひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。