
多彩な工芸をその中に含み、いわば京都の伝統工芸の縮図とも言える京仏具工芸。その総合芸術の、まさに中心に据え置かれるのが仏像彫刻です。現在の仏像彫刻に大きな影響を与えた仏師・定朝は、平等院鳳凰堂の阿弥陀如来像作者として知られ、唐風なものから和様と呼ぶにふさわしい仏像彫刻の一典型を創り上げました。
日本三景の1つである天橋立は約8,000本もの松が茂り、日本の名松百選にも選ばれた特別名勝です。しかし2004年10月の台風により、樹齢300年の大木を含め193本もの松が倒れました。この名松を復活させようと、京都伝統工芸大学校(京都府南丹市。以下大学校という。)で仏教彫刻を勉強する31名の学生たちが立ち上がり、高さ2.5メートルにも及ぶ「文殊菩薩像」を完成させました。現在は天橋立近くの知恩院に奉納され、無相堂に安置されています。今年もその活動に刺激を受けて、同大学校で仏教彫刻を専攻する27名の学生たちによりその倒木松を使って2体の仏像を制作しました。1体は滋賀県高月町の渡岸寺の「国宝十一面観音立像(平安時代作)」を、もう1体は大阪市都島区の藤田美術館所蔵の「地蔵菩薩像(鎌倉時代作)」をモデルとして、約6ヶ月の期間を経て完成させました。当作品は京都伝統工芸館(烏丸御池)で展示されています。大学校で講師を勤める伝統工芸士は、「もちろん匠と呼ばれるにはまだまだ険しい道のりが待っている。しかし、だからこそ一生修業の世界。仏さんを彫るのではなく、人間性や気持ちが大事なのだ。」と語ります。
時に優しく、時に厳しい。しかしいつの時も美しく、凛とした仏の表情。人の心のよりどころとなり続けるその姿を、仏師はただひたすらに心と刃物を研ぎ澄まし、木の中から仏をお迎えするのです。
取材協力/京都伝統工芸大学校