住職:大釜諦順さん
「この寺の住職は代々、楽しいことが好きらしいんですわ(笑)。
境内で狂言や歌舞伎が盛んに行われた時代もありますし、そもそも、ここは浄瑠璃発祥の地と言われます。
夜店が周囲を埋め尽くすような縁日がたっていた時期もあれば
幕末には芝居小屋があって、虎が見世物になっていたという記録もあります。
実は戦後になって、そういった賑やかさが失われてきたんです。。。
そんな中、寺に泥棒が入ったことが、この手作り市をはじめるキッカケなんですわ。
夜中に地蔵堂に入った泥棒は、たくさんあるお地蔵様の中から、一体だけ、お地蔵様を盗んでいきよったんです。
吉水俊成町の地蔵盆のご神体として保管させてもらっていたお地蔵様なんですが・・・、罰当たりなことです。
しかしまぁ、実はこのお地蔵様は、コンクリート製の比較的新しいお地蔵様であって、本当のご神体のほうは無事だったんですよ。
きっと身代わりになってくれたんでしょう。。。
ともあれ、そのとき壊された地蔵堂を直すために、左官屋さんに来てもらいました。
その左官屋さんと、お寺が賑わっていた昔の四方山話をしているうちに、
『昔のように人が自然と集まるような賑やかさを取り戻せば、こんな物騒なことも無くなるかもしれませんね』
という話になって、
『では、うちの家内が百万遍の手作り市で店を出してるように、ここでも市を開いたらどうですか』
という提案をいただいたことが、事のはじまり。
その半年後、2001年に手作り市が実現して以来、少しずつ人が集まる場所として定着してきました。
そもそも、お寺というのは、こういうもんやと思ってるんです。
人々が自然と境内に集まり、そこに来た人が仏さんのいる空気に触れて、落ち着きや安らぎを感じられる・・・
そのために、『なんや、ちょっと面白そうなことやっとるな』と、立ち寄ってもらえる催しをするのも、お寺の役割のひとつ。
信仰のかたちは人それぞれですから、お寺の空気をただ吸いに来るだけでもいいんです。
今は、『人の良い流れ』がここに戻ってきたように感じて、嬉しく思っています。
手作り市のほかにも、狂言や万灯会などを催していますから、
お近くの方も、遠くからいらっしゃる方も、機会がありましたらお立ち寄りください。
そうそう。歴史に興味のある方に一言。
この寺は、1000年以上もの間、この場所で京都の人々を見守り続けてきました。
ですから、ちょっと角がたつ言い方かもしれませんけど、ここは『死体が埋まっていない場所のひとつ』。
平安時代から移転してないお寺は、京都市内では数えるほどしかありませんが、ここがそのひとつなんです。
言い出したらキリがありませんが、開山したのが1000年前なのか1300年前なのかも、実は断定できません。。。
この地に降り積もる長い歴史の中に、ぜひ一歩足を踏み入れてみてください」