船岡山のふもと、「聖徳庵」と名づけられた一軒の小さな京町家。毎日のように笑い声が響くこの町家は、ジャック・コンベリー・宗好さんと、その妻・広美さんの茶道教室。
子供から大人まで、様々な人が毎週やってきて、和やかな時を過ごします。
日本の美しさを見つめ直し、自分の心に何かを発見したい人ならば、一見さんの旅人であっても温かく迎え入れてくれる場所。
門を叩いて、そんな世界に足を踏み入れてみるかどうかは・・・、あなた次第です。
【茶道教室の様子】
この茅葺の門が、聖徳庵への入り口。
お茶室では、既にお稽古が始まっていました。
四畳半の茶室には、数名の生徒さんと、ジャック宗好先生。
一人がお手前をする数十分の間、先生は英語とドイツ語混じりの日本語で指導します。
「Just a moment, その茶入れは違いますよ」
「その手の動き、もっとelegantにしましょう」
指先ひとつの動きにまで細かい注意がなされ、お手前の動作に緊張感と美しさが増します。
他の生徒さんは、お手前する人の動きを注視しながらも、リラックスした様子。
冗談交じりの会話が交わされ、茶室は和やかな空気と笑い声に包まれています。
しかし、会話に夢中になりすぎていると・・・「Anticipate!」と、ジャック宗好先生の声が飛ぶこともあります。
「亭主(お手前する人)の動きをよく見てください。
タイミングをanticipateして、客としてのマナーを忘れないこと。
亭主が礼をする前に、姿勢をただしなさい。
亭主と客がひとつの空間でお茶をいただき、『peace=和』を作るのです。
片方だけじゃ意味がないでしょう?
ところで、anticipateって、日本語で何ていうの?
・・・あぁ、『先読み』。難しいね(笑)。ありがとう」
とても和やかな、柔らかい時間がそこには流れていました。
それでいて、背筋がピンと伸びるような・・・凛とした空気。
この聖徳庵は、茶道に集約された日本の美しさに自然と気づかせてくれる空間でした。

帰り際に茅葺の門を通り過ぎる時に足元を見ると、そこにあるのは三文字の漢字 ― 『看脚下』。
「脚下を看よ(あしもとをみよ)と読みます」と、にっこり笑ったジャック宗好先生。
「禅の極意は、何か特別で遠くにあるものではなく、日常の中の一挙手一投足にある。
真実の自分を見落としてはならないという教えなんですよ」
「生徒さんは毎週お稽古に来る人がほとんどですが、国内外から旅行に来た際、立ち寄ってくれる人もいます。
茶室に人が集まって和をなす時、そこには本当に良い空気が流れるんです。

だから、Tea is easy! お茶って簡単なんです。心で感じ取ることがまず第一なんですから。
茶道の細かい作法のひとつひとつには、すべて意味があります。
しかし、そこに心がこもっていなければ、まったくの無意味なんです。
『Peacefulness through a bowl of tea(一碗から平和を)』
鵬雲斎大宗匠がよくおっしゃっていました。

ここを訪れた人が心で何かを感じとり、それを日常の中で育てていってくれたら嬉しいですね」
